国立大学法人 大分大学医学部 環境・予防医学講座

お知らせ

研究拠点形成事業(B型:アジア・アフリカ研究基盤形成型)に採択されました

2017.07.27

アフリカ諸国における公衆衛生上の問題は複雑多岐にわたっており、HIV・結核・マラリアという3大感染症による負担が非常に高いだけではなく、ヘリコバクター・ピロリ(ピロリ菌)を代表とした消化器(感染症)疾患も多大なる負荷を与えている。アフリカ人口の8割以上が感染していると考えられるピロリ菌は、その感染のみにより短期的に死亡することは少ないが、消化性潰瘍、貧血などの血液疾患、栄養不良、小児の成長不良、HIVとの共感染による下痢症、悪性腫瘍など多彩な疾患を引き起こす一方、我々の解析ではAIDS発症を抑制するなど、多様な側面を持ちあわせている。我々はアジア・中米を中心に長年にわたる国際共同研究で、ゲノム疫学研究から胃癌の発症率の地域差の一因としてピロリ菌の病原性の差異が関与していることを解明し、消化器疾患研究ネットワークを形成してきた。その結果、アジア各国の内視鏡技術の大幅な向上がみられ、現在大分大学における世界中のピロリ菌分離株の保有数は7,000株を超え、世界最大規模である。これまでの世界的な研究体制を基盤として、ナイジェリア共和国・コンゴ民主共和国・ケニア共和国にてピロリ菌の感染状況と消化器疾患や他の感染症の把握、保健体制の拡充、南アフリカ共和国ではピロリ菌のゲノム解析拠点化にむけて消化器感染症研究ネットワークの構築を開始している。基本的な保健体制が不十分なアフリカ諸国であるが、本事業では、アフリカ側研究者と協力して、1) 消化器疾患の保健体制や内視鏡技術の拡充と、効率的な診断・治療に非常に有用な2)ゲノム疫学研究の基盤を確立し、3)ピロリ菌とヒトの相互作用と共進化の理解、を目指し、アフリカ諸国を我々の消化器疾患研究ネットワークに組入れ、日本を中心とした世界拠点形成を最終目標とする。母子保健、下痢などの感染性疾患、非感染性疾患、栄養に多大な負荷を与えていている消化器疾患に関して、本研究提案が、アフリカ大陸全ての人々の生涯を通じたユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の向上にむけて重要な第一歩を与える。

一覧に戻る